美濃加茂の人物
子どもの時のおもひで
津田左右吉
つだそうきち 1873-1961
 歴史学者として大きな功績を残した津田左右吉(1873~1961)は12歳で小学校を卒業して名古屋に進学するまでの多感な少年時代を加茂郡東栃井村(現在の美濃加茂市下米田町東栃井)で過ごしました。

 津田は美濃加茂で過ごした少年時代を、晩年になってから「子どもの時のおもひで」という文章に綴っています。この文章は津田が75歳の時に刊行された『おもひだすまゝ』という本に付録として掲載されました。その後、昭和36年(1961)に刊行された『思想・文芸・日本語』という本でも付録として掲載されています。「子どもの時のおもひで」の全文は『津田左右吉全集 第二十四巻』からも読むことができます。

 津田左右吉が自身の少年時代を振り返って書いた「子どもの時のおもひで」には、津田が生まれてから十二歳で小学校を卒業して名古屋に進学するまでの思い出が綴られています。その内容は、津田の暮らした家のこと、家族の様子、下米田の自然の風景や、学校での勉強についてなど、様々なテーマが取り上げられています。

 ここでは当館が所蔵している「子どもの時のおもひで」の原稿を解説文とともにご紹介いたします。原稿は二〇〇字詰め原稿用紙を使用して書かれました。原稿用紙は両面に文字が書き込まれていますが、裏と表では違う作品の原稿となっています。紙の裏面や隙間を使用して、細かく文章が書きこんであるのがわかります。
 津田の原稿は、津田の草稿をもとに夫人の常子が浄書(清書)していたといわれています。「子どもの時のおもひで」の原稿は、常子が浄書したものに、津田がさらに書き込みや修正を加えた形で残されています。

 この原稿には『おもひだすまゝ』や『思想・文芸・日本語』に掲載された「子どもの時のおもひで」の文章と原稿の文章を比較すると、刊行された文章にはないエピソードが書かれている箇所もあり、津田が自らのおもいでを記憶から文章に落とし込む過程を垣間見ることができます。

凡例

  • 原稿に書き込まれた文字のうち、「子どもの時のおもひで」の文章と思われる部分のみ翻刻を行いました。
  • 翻刻文中の漢字、仮名遣いなどは可能な限り原稿に準拠しましたが、表記できなかった部分については原稿と異なる表記になっている場合があります。
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