美濃加茂事典
伊原敏郎(青々園)(いはらとしろう(せいせいえん))
 歌舞伎評論家。歌舞伎研究家。作家。明治3(1870)~昭和16(1941)年。島根県出身。『早稻田文學』の編集に携わる。坪内逍遙との関わりは成立学舎の時にはじまり、かねて敬慕していた逍遙から「英国七家文」などの講義を聴き、尊敬の度を深めた。やがて『二六新報』の劇評に対して、逍遙から『早稲田文学』の彙報欄で「小只誠」と評され、その才能を高く評価され感激した。明治27(1894)年、逍遙から国劇史の研究を勧められ、『早稲田文学』に国劇史の沿革の執筆を求められた。伊原は「先生から其ういふ親切な御言葉を戴いて、有難涙にくれて帰つた。さうして其の時の先生の一言が、私の一生の指南車となつたのである」(「劇評家としての三十年」)と記している。『日本演劇史』『近世日本演劇史』のいずれにも逍遙は序文を寄せている。伊原は「私の著述や研究に対する第一の恩人は坪内博士」と強い感謝の言葉を記している。
【図書資料】№1491『坪内逍遙事典』p33
【歴史資料】№2989「文学博士坪内雄蔵自筆原稿 近世日本演劇史序」、№13371『近世日本演劇史』