美濃加茂事典
渡辺新一(わたなべしんいち)
 大正時代の伊深の実業家。1878(明治11)年生まれ。1918(大正7)年、伊深村牛牧から取水する発電所を建設した(1918(大正7)年願書提出、1919(大正8)年許可)。電力供給区域は伊深村一円で、伊深に電灯がついたのはこの時である。のち、渡辺は、三和、蜂屋、山之上3カ村に供給を図り、1921(大正10)年に氷坂電気(株)を設立した。のち、津保川電気(株)を買収するなど業務を拡張していったが、1938(昭和13)年、電力統制令によって全事業を東邦電力(株)に売却し、渡辺は電力事業から手を引いた。渡辺は伊深温泉を開業したことでも知られる。昭和の初めの頃、現在の伊深町上切地内で温泉をパイプで送水して引き入れ1932(昭和7)年5月に温泉旅館を開業した。のち廃業し本館は関の聚楽荘へ売却された。なお、渡辺は当時、氷坂(こおりざか)電気を始めており、その事務所の周辺が温泉の敷地となった。
【図書資料】№1311『写真集 明治大正昭和美濃加茂』p79,83