美濃加茂事典
「槍ヶ岳」(やりがたけ)
 槍ヶ岳を開山した播隆が苦難を乗り越え初登攀を果たす様を、臨場感のある力強い筆致で描写した小説。作者は瓜生卓造(1920-1982年)、早稲田大学政治経済学部出身の小説家・随筆家である。「槍ヶ岳」は、山岳文学選集8『遠い湖』に収録された一編。最期の時を太田宿の脇本陣・林家で過ごした播隆(1786-1840年)の足跡を求めるように、美濃太田を訪れる場面から小説は始まる。市の成り立ちや歴史にも触れつつ、駅前通りから中山道太田宿に入り、祐泉寺の播隆の墓に着き、周りを見物しながら駅から歩いていく行程を追体験するような、坦々とした筆致で町の様子を書き記している。
【図書情報】№723『遠い湖 山岳文学選集8』