人物をたたえる活動
第19回坪内逍遙大賞
第19回受賞(2022)
松岡和子(まつおか かずこ)(1942- )
翻訳家・演劇評論家である松岡和子さんは、シェイクスピアの全37戯曲を1993(平成5)年から28年の歳月をかけて翻訳するという偉業を達成しました。坪内逍遙博士、小田島雄志氏に続き、日本で3人目の快挙です。松岡さんは、訳した戯曲の稽古に必ず立ち合うなど演劇の現場にも数多く携わりながら「現代」にふさわしい感覚の訳稿を仕上げ、日本の演劇界の発展に大きく貢献しました。
1942(昭和17)年旧満州新京(長春)生まれ。東京女子大学英米文学科卒業。東京大学大学院修士課程修了。専攻は17世紀イギリス演劇。発足当初の現代演劇協会(付属劇団雲)文芸部研究生、『罪と罰』(演出・福田恆存)『黄金の国』(演出・芥川比呂志)の公演には演出助手として参加。1982年東京医科歯科大学(教養部)助教授、1986年から1997年3月まで教授。東京医科歯科大学名誉教授。
美濃加茂市は、2021年7月29日に行われた坪内逍遙大賞選考委員会にて、満場一致の決議を受け、第19回坪内逍遙大賞を松岡和子さんに決定しました。
受賞コメント
坪内逍遙の数々の偉業はいくら高く評価してもしすぎることはありません。なかでも日本初のシェイクスピア全作品の個人訳はその極みでしょう。私の場合は戯曲だけですが、シェイクスピアの作品を翻訳した身としては、大坪内の名を冠したこの賞を頂戴するのは何にもまさる歓びであり、大きな誉れです。28年にわたる翻訳作業のあいだ、シェイクスピアの逍遙訳は常に傍にありました。折に触れて逍遙訳シェイクスピアに目を向け、その的確な原文解釈と、時に格調高く時に下世話にくだけた訳文に励まされてきました。いまここで「逍遙先生、ありがとうございます」と声を大にしたい気持ちです。