美濃加茂事典
『若葉文藝』(わかばぶんげい)
 1946(昭和21)年1月、加茂郡古井町の若葉文藝社から発行された文芸雑誌。戦後間もない混乱の時期、「地方」からの文化運動の展開の一つとして位置づけられる。創刊同人は大畑(前田)威中野(鈴木)冬二らで、顧問には渡辺和郎がいた。後に長江(兼松)鑛一長谷川史郎渡辺力(李奇)が加わる。創刊当初は大畑宅にあった社は同年5月頃に長谷川史郎の住む「昭月」に移転した。この頃から、台湾から帰国した詩人の長尾和男岡本一平が『若葉文藝』に関わり始める。一平は白川にいた時分から若葉文藝社で講話を開講し、長谷川史郎と文通を行うほか、渡辺和郎とも交流をもっていた。『若葉文藝』5号の表紙は、岡本一平の絵が用いられている。一平は若葉文藝社を主題とする漫俳も作っていた。更にこの5号は、長尾の参加の影響もあり、「詩特集号」を組んでいる。長尾は顧問格として若葉文藝を引っぱって行く存在となる。
 『若葉文藝』は投稿誌と同人誌を兼ねた内容であり、批評室も設けられ、また文芸のみならず音楽や演劇等も扱う総合文化誌となっていった。更に長尾の登場以降、次第に詩に傾いていく。社屋には図書館を持ち、1000冊の蔵書を有していたという。『若葉文藝』はこの地方の文化の愛好家が集う誌面となり、社屋はサロンのような場所となっていたが、売れ行きの悪化や長谷川の病気の進行などが相俟って、1947(昭和22)年1月、第10号をもって廃刊した。
【基本図書】『市史/通史編』p1046
【図書資料】№3049『若葉文藝 正月号』、№22093『世態人情を描く 岡本一平展』、№23149「地方文化のつくりびと」 -詩人 長尾和男と若葉文芸』、No.24411「渡辺和郎の地方文芸活動について」『美濃加茂市民ミュージアム 紀要 第15集 2016」p3
【展示情報】企画展2014「「地方」文化のつくりびと―詩人・長尾和男と若葉文藝」
【関連情報】〈中央図書館〉『若葉文藝』100214824、100214832、100214840、100214857、100214865、100214873